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第23回 「腰で曲がる感じ」 Alfa Romeo SZ (ES30)


【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房) 「買って得するクルマ損するクルマ―新車購入全371台徹底ガイド」 (講談社)他多数。最近、子供も生まれ、家も建て、ますます精力的に世界中を飛び回っている。


 22歳で免許を取り、自動車雑誌『NAVI』に入社したときにはバリバリの若葉マーク。
廃車寸前の86レビンで夜毎筑波パープルラインに通い、みるみる運転の腕前を上げていった若き日の森慶太は、それから10余年、今や気鋭の自動車ジャーナリスト。
明快な論点、みずみずしい視点、の森慶太が駆る。イタリア車ははたしてどうなのか。


宅八郎さんも欲しかった

 こないだオレ、SZに乗ったよ。といわれて、クルマ好きだったら「どうだった?」とききかえさずにはいられないでしょう。「あっそう」じゃあハナシが続かない。乗ったんすよ。お店の人の知り合いで最近買った人がいて、それをちょっくら貸してもらって。

  SZというと、乗ったのは今回が初めてだったけど思い出はある。その昔NAVIの編集部員だったころ会社にいたら電話がかかってきて、出たら宅八郎さんからだった。で、だしぬけに彼いわく「SZ買おうと思うんだけど、どうですか?」。どうですかっていわれてもさあ。オレ乗ったことないし。しょうがないんで、なんか知ったようなこと(は宅さんも全部知っていた)話して電話きった記憶がある。

 それにしても、当時SZってカルく1000万円ぐらいしてたよね。並行モノ(しかなかった)の新車がプレミアついてて。宅さんも当時はバリバリの売れっ子だったからねえ(ちなみにすごく礼儀正しい話し方だった)。「あのガンダムみたいなカタチがいいと思うんですよ」なんて、ポイントついてたよなあ。

  あと、いま思い出したけど私が辞める前の二玄社に1台いたですよSZ。なんかエラい人が自分用に(経費で)買ったヤツが。神保町って要するに坂の下のほうで、しかも悪いことにそのSZがたまたまタワーパーキングのいちばん下のほうに停まってた夜に台風の水害にあっちゃって。要するに水没系。ってこれ、あくまで噂ね(笑)。この目で見たわけじゃないから水没してたとこ。当時は私、あんまりマジメに会社いってなかったし。会社の人とあんまり口きいてなかったし。

タクハチローでスイボツで、でもって10年ちょっと経っていよいよ三度目の正直が今回の試乗ですよのSZ。ES30。ここ数年中古車市場ではずっと底値(といっていいでしょうあの状況は)のままだから、もし乗ってすげえヨカッタら読んでる皆さんにオススメしようかいなという感じで。

 で、結論としてはSZ、オススメします。ということはSZ、すげえヨカッタ。毎度ここのコラムは乗るたび「すげえヨカッタ」でバカみたいだけど、でもウソはいってないよ。なんとゆっても、今回はオーナーさんが気ィ遣う必要ない人なんで。少なくとも、クルマをホメなかった場合でもイタリア自動車雑貨店の売り上げには何ら影響の出ない人なんで。だからといっていつもはウソついてでもホメている、わけではこれまたないんだけどね。

 当時のアルファがなんでSZみたいなクルマを作ろうとしたか、あるいは実際に作ったか、その意図を私は知らない。実はこんど、11月の半ば頃にアルファGTクーペを試乗しにイタリア行くんで覚えてたらそのへんきいてみる。いちばん知りたいの、そこんとこでしょう? 「いや僕は当時のことは……」っていわれて終わりって気もするけど。なんせ10年よりかもっと前のことだから。

 SZが、ぶっちゃけた話ナナゴーの一族(ホントはアルフェッタの一族というべきでしょう)であることは私も知っている。もちろんこれを読んでる人らもよーく知っていることだろうから、ここでは詳しく書きませんよ。つまりその、トランスアクスルでどうのとか、リアがド・ディオンで云々とか、あるいはホイールベースがナナゴーと同じだとかそのへんのことは。あと、見た目がスゴいとかそういうことも別に書かない。写真見てくれ。



最後のヒト花咲かせたかったアルファ

  パッと乗って、とりあえずドライビングポジションは明らかに、そしていかにもイタリア流にヘン。頭がガラスに当たりそうにならないぶんフェラーリ308あたりよりはマシかなという程度で、とにかくどこをどう調整してもバッチリは決まらない。身長170CM伝統的日本人体型の私の場合、座面をめいっぱい前に出してもまだ足りない。目の前がうっとうしくなるのは覚悟のうえでもっと前に出したいんだけどストッパーに当たっちゃう。

 フと思い立って助手席をスライドさせてみると、これが運転席よりずっと前まで動く。つまり、スライド前端位置が左右で大きく違う。それを知って最初はナニカンガエテンダ逆だろうと呆れたけれど、でもこれ、うっかりやテキトーの産物ではなくわざとなのかもしれないと考え直した。つまり、「ここより前寄りの位置で運転したら旋回時の体感が我々の想定する範囲を超えちゃいますよ。SZ本来のキモチよさは味わえませんよ」っていう。えーとあのその、Z軸まわりの回転運動の中心とドライバーとの位置関係といえばいいのか。大事ですからね。あるいはひょっとして、あそこより前で運転すると乗った感じがナナゴーとそっくりになっちゃうのかもしれない。

 SZはトランスアクスルで、つまりギアボックスがファイナルドライブといっしょになって後車軸のほうについてるレイアウトなんだけど、だからといってエンジン搭載位置がものすごくキャビン寄りというわけでは特にない。車検証の数字みても、ものすごくゴジューゴジューに近いわけではなかったし。ていうか、数字だけみたらフツーのFRだし。

なんだけど、コーナリングするときのあのキモチよさはナンなんでしょう? 旧スパイダーほどではないけれどヤジロベエっぽいバランス感覚(その際ドライバーは揺れの真ん中にいる)がノーコーにあって、で、それってやっぱりアルファですよ。V6のおかげで前側のオモリの存在感がより明確なぶん、ナナゴーよりもキモチいい。「ナナゴーよりキモチよかったです」っていわれてオーナーはあまりうれしくないだろうけど。

 うーん。なんていえばウマく伝わるだろう読者に。って悩んでたらばオーナーいわくは「腰で曲がる感じ」。あそう。そうなのよ。アシやボディをギチギチに締め上げて曲がりを強化するんじゃなくてね。天秤かついで人込みのなかをヒョイヒョイ縫って走るのが上手い一心太助(江戸時代の魚売り)って感じでしょうか。そういわれてもうれしくないね。オーナー的には。

 スペックとかほとんど知らない状態で乗って、私はSZってホイールベースがナナゴーより短いんだと思った。したら実際は違って、同じだった。でも、さらに資料を読み進めたらトレッドは前後とも大幅に拡大されていた。つまり、比率でいえばショート・ホイールベースってことですな。負け惜しみめくけど。

 

 とにかくSZ、目を三角にしてトバしたりしなくてもバッチリ楽しい。というかクルマのよさを味わえる。エンジンもそういう性格になってるし。路面からの突き上げが全然ない、わけではないけど乗り心地もいい。少なくともガチガチ系では全然ない。でもって、そのガチガチでないアシに対してはいわゆるボディ剛性も実用上は十分ある。ボディやアシの剛性に頼った走りじゃないし。でも逆にいうと、ガチガチのアシとバランスのとれそうなボディ剛性とはとてもいえない。高性能車としては、年代の古さを考えてもなおユルい。

  でもそのユルさがまた……なんてことを書くつもりは私全然ないです。むしろ大事なのは、SZというクルマがそのドライバーに対して提供すべき種類のドライビング・プレジャーを達成するのに十分なところを作った人たちが(たぶん)きっちり見切ったうえでやっている、ということでしょう。最高速チャレンジやれとかサーキットでしごけとか、そういうことは別に考えてない。どうやら。だって、タイム競争とかするんならそこらのハッチバックを改造したほうがよっぽど都合いいし。

 それはまあ、実はアルファもやりたかったかもしれないですよ。予算がふんだんにあったら、それこそ首都高のワインディングでポルシェをブチ抜くようなSZを。……いや、やっぱ違うな。きっと。アルファの人らは、きっと最初からこういうSZを作りたかったんだと思う。少なくとも、「道具だての基本はナナゴーってことでよろしくね」ってなった時点で(というこは最初っからってこと)。FR作れなくなっちゃう前に最後のヒト花咲かせたかったんじゃないでしょうか。

 

要するにSZはバッチリなんだ

ある意味これ、高級レストランのまかないメシみたいなもんかもしれない。仕入れたキャビアが余ったんでドンブリご飯にのっけて、であとはナンかわからんけど上手いことアジつけして。もちろんウマいわけです。すごくウマいんだけど、フツーにお客に出せるようなモノではない。従業員か、あるいはお客でも常連さんにだけそっと出す感じ。ほかの客いないとき見計らって。そう考えると、SZってクルマをスッキリ理解できる気がする。内装の雰囲気あたりは、従業員用のまかないというよりはだいぶお客さん用にできてるけど。

 チョイ乗りしただけでこんなこと書くのもナンだけど、SZって毎日アシに使って嬉しいようなクルマではないです。というか、クルマが可哀相になっちゃう。乗りアジじたいは全然トゲトゲしてなくて、むしろ優しさすら感じさせるぐらいなんだけど(そこがまた、なんともアルファらしいわけですよ)。

 休日とかまとめて時間とれるときに、たとえば箱根へでも出かけてみる。と、そういうような使い方をするとバッチリ。モーガンをあえて毎日乗ってカッコイイ、みたいな図式は、このクルマにはあてはまらないと思う。ハズシじゃなくハズレになっちゃうから。

 一方で、たとえばナナゴーあたりは普通に使ってこそのクルマですよ。たまの休日の「さあ乗るぞ」の1台がナナゴーというのは、これはちょっと寂しい。寂しいというか、ハレの感じがちょっと足りない。少なくとも、現役引退からまだ10年ちょっとしかたってないいまの段階では。

  ナニがいいたいかというと、要するにSZはバッチリってことです。値段(400万円ぐらい?)的にも見た目的にもまた作りの感じ(現代の工業製品としては明らかにカローラ的ノープロブレム度が低い)や乗った感じ的にも、いわゆる趣味のクルマとして存在の頃合いが。あるいは立ち位置が。911でいうとスピードスターぐらいの、実にちょうどいい非日常度。もちろん、その非日常感を出すにあたっての手法はスピードスターの場合とだいぶ違う。でも、絶対値としては同じくらい。スピードスターのほうがちょっとモーガンに近いかもしれないけど(なにしろ、閉じると狭くて開けると風ボーボーな以外は911カブリオレそのものだから、ほとんど)。

 というわけでSZ、クルマがヨカッタというのはすごくあったわけだけどそれ以上にそっちのほうの絶妙さに私は感心した。クルマ雑誌で特集キャンペーン張って宣伝する必要はないと思うけど、でもこのコラム読んでる皆さんぐらいはおさえといてほしい。ポイントとして。いわゆるマーケティング主導のクルマ作りからはこんなのは絶対出てこないし、といって作り手のたんなるオ○ニーでもSZは全然ない。チャレンジ・ストラダーレやGT3のRSみたいなクルマを作るのはごく簡単だけど、SZみたいなクルマを作るのはすごく難しいと思う。難しいからエラいってわけでもないけど、やっぱ貴重ですよ。こういうのは。

 あと、今回クーペに乗ってみて思ったことに、この感じだったらきっとロードスターもイイと思う。つまり、RZも。どっちも乗ったことなかったときは「屋根切りモンはボディ剛性がなあ」なんて知ったかな心配をしていたけれど、もう大丈夫。考えてみたら、旧スパイダーだって車体はユルユルだけどそれでちゃんとキモチよく走れるクルマになってたし(というかアルファがそうしてた)。

 ですからひとつ、これ読んでる人でRZもってる人がいたらゼヒともイタリア自動車雑貨店までご一報を。乱暴な乗り方はしません。ナンなら視界から外れない範囲をグルッと1周か2周か3周か4周ぐらいでもかまいません。今回みたいな匿名オーナーでも大歓迎。人物プロフィール取材するテマも省けるし(笑)。ご連絡、待ってます。担当ヤマザキまで!!。



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