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第12回 仏門にやってきた Ballerina(ダンサー) LANCIA BETA spider


【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房) 「買って得するクルマ損するクルマ―新車購入全371台徹底ガイド」 (講談社)他多数。最近、子供も生まれ、家も建て、ますます精力的に世界中を飛び回っている。


 22歳で免許を取り、自動車雑誌『NAVI』に入社したときにはバリバリの若葉マーク。
廃車寸前の86レビンで夜毎筑波パープルラインに通い、みるみる運転の腕前を上げていった若き日の森慶太は、それから10余年、今や気鋭の自動車ジャーナリスト。
明快な論点、みずみずしい視点、の森慶太が駆る。イタリア車ははたしてどうなのか。


各種イチャモン攻撃の末に手に入れた珍車

 ランチア・ベータのスパイダーを見してもらいに清水までいってきた。さくら某のマンガで有名な静岡県清水市。オーナーのマルモさんは、ひらたくいうとお坊さん。日蓮宗の宗務院というところにオツトメだそうだ。ちなみにワタシは静岡県焼津市出身で、焼津市においてはお坊さんは「オッさん」と呼ばれている(ただしアクセントは“オッ”にある)。

 個体は1980年モノで、マルモさんのもとには2年前の7月からあり続けている。車両代98万円だったのを、「なーんだこれエンジン動かないんだぁ」等の各種イチャモン攻撃をカマしコミコミ98万円にてご購入。ホントはクーペを買おうとしてたんだけど縁がなくて、ウーンとなってるときにこれに出会ってしまった。で、買ったら馴染みの工場(話きいたらすんげえ良心的で熱心でいーとこ)に持ち込んで26万円かけて整備。

 コミコミ98万円はしかし、高かったのか安かったのか。ベータのスパイダーだから珍車は珍車なんだけど、要は取り外し式のデカいサンルーフがついてて後ろのとこが幌になってるだけだともいえる。クーペとの違いは。

 おそらく、これ売ったお店の人は車両単体98万円をコミコミ98万円にしてでも売りたかったんだと思う。売れてホッとしたと思う。こういうのって、仕入れて(つまりカネ払って手に入れて)店に置くのってかなり根性いるから。右から左へホイホイ売れるクルマならあまりのっけないで(利益を上乗せしないで)出すこともできるけど、長期間シコる可能性がデカいクルマは基本的に多めにのっける。競馬でいったら大穴買いですよ。



お坊さんでもバネは切る

 えーさて。今回の個体、とりあえずグッサグサに錆びクサリまくっているわけではないところは加点要素。二度目と思われるペイントがけっこういい仕事=カネかけた系であるのも同様。ヘンにイジられた形跡も特になし。しかも購入時の走行距離は2万kmそこそこ(現在は3万5000kmとか)。22年オチ3万5000kmといわれて、この状態はそれなりうなづける。フロントのアゴ下のクロスメンバーにクラックが入ってるのはまあご愛嬌として。

 このベータ・スパイダーはアメリカ仕様。エンジンは、マルモさんによると「89ps」のフィアット・ツインカム2.0。
「38φシングルのキャブも含めて、エンジン本体はノーマル。5000rpm超えると苦しくなりますけど、低速トルクは太いですよ。これで十分楽しく走れます」

 

ただし点火系はそれなり強化。
「コイルは日産のバネット用を使ってます。あと、アーシングは効きましたよ。スゴく」
 前後の5マイルバンパーは撤去。
「あれ、スゴい重たいんですよ。で、とったらフロントの車高が上がっちゃって(笑)」
−−で、どうしたんですか? 現状だと別に上がってる感じしませんけど。
「コイルひと巻き半カットしました」
−−(笑)。お坊さんがバネ切った。
 アメリカ仕様ということでエアコンも。
「とりあえず、ついてます、ってことで(笑)。ガス入れれば動くのかもしれませんけど、昔のタイプの冷媒だから高いし。それに、エアコン外して軽量化してどうってほどのクルマでもないし。そのままにしてあります」

 そのほか、たとえば幌はボロい。でも、形状が単純だから近所のテント屋さんで直してもらえるはずだ(と思ったら実際オーダー中らしい)。あと、シートも一見してボロかったがよく見たら縫ってる糸が切れてるだけだった(マルモさんによってDIY修理された部分もあった)。レザーそのものはまだイケそう。
 クルマのあっちゃこっちゃをナデたりサスったりしていてひとつオッと思ったのは鉄板関係。これがブ厚くてなかなか。いかにも高級品……というか、少なくとも「安モノじゃなかったわけね、さすがに」ぐらいは思った。ドア閉めたときの音とか振動なんてけっこうタマランものがあった。ズドッと重厚で。



“ランチア・ストラット”はスゴかった

 で、チョロッと乗らしてもらった。この頃のランチアといえば'80年代アタマにボコボコ出てきた国産FF車のお手本だったという歴史的経緯があるので、そのへんどうなのかというオベンキョー的楽しみもあった。

 どこがどうお手本だったかというと、具体的にはリアサス。パラレルリンク+トレーリングアームのストラット式独立懸架。つまり、前後方向の位置決めをするロッドというかアームが片側あたり1本あって、でもって左右方向は同じく片側あたり並行(だからパラレル)の2本のロッドで支えるという。でそれプラス、ダンパーストラット。およびコイル。そういえば、昔は“ランチア・ストラット”などと俗称されてなかったか?

 

国産FF車で最初にマネした(?)のは'80年の初代FFファミリア(当時の日本車としては革命的なぐらい操縦性がよかった)で、その後トヨタも日産もマネをした。パラレルリンクの取り付けポイントを工夫することでトーコントロール機能(パッシブのリアステア機構)を盛り込むこともできたりしてセッティングの自由度が高く、構造も複雑じゃなくて、またコストもそれなり安くて、要するに重宝だったんですね(「ある程度までのストロークで使うんだったらあんなにいいFF用リアサスはない」みたいなことをいうエンジニアもいる)。だもんだから、つい最近までは盛んに使われてきた。主として日本のFF車に。

 ちょっと脱線するけれど、最近のFF用リアサスの主流というか流行りはゴルフ式。コンパウンドクランクというかトーションビームトレーリングアームというか、要するに左右のトレーリングアームが根元つまりボディ側取り付けポイントの近くで剛結されているタイプ。だから独立懸架じゃないんだけど、連結しているU字断面の部材が捩じれるからある程度は独立で動ける。

 だもんだから半独立なんていわれたりもする。このタイプの場合は車体側取り付けポイントのブッシュの特性をアレすることでトーコントロール機能をもたせることができて、あるいは連結部材のU字を上開きにするか前開きにするか等でもアジつけができるし、またスペース効率がさらによくて、あとおそらく作るのがカンタン。リアサス全体を組み上げといて車体側にポンと一発でつけられるから。つまり生産上効率がいい、ってことも大きいと思う。流行ってる要因として。一連のトヨタ車をはじめ、ずっとトレーリングアームで頑張ってきたプジョーやルノーやあと忘れちゃいけないフィアットも最近は雪崩を打ってゴルフ式を採用しはじめている。ヘンな話、VWの特許が切れたりでもしたんかと思ったほどだ(そういうことは別にないらしい)。

 寄り道が長くてゴメンなさいね。そういうトレンドがあるなかで、たとえばアルファはどうか。156も147も、リアサスは基本的にランチア式のストラット(155や145はFIATゆずりのトレーリングアームだった)。採用理由は、いうまでもないことですが走りをよくできるから。作りやすさやスペース効率より走り。さすが、根性入ってる。本家ランチアのリブラはというと、いけねえ忘れた。でもたしか、快適さ重視でまた別のマルチリンクかなんか使ってたんではなかったか。そのへん、FIATはエラい。ガワだけ変えていろんなクルマ作りまくってるヤツらとは心意気が違う。



ダンサー。それも生まれつきの。

 で、ベータ・スパイダー君はどうだったか。これがけっこうヨカッタ。スロットル一定の旋回だとガンコなアンダーステアが出て、でもってスロットルを急激に戻すとイッキにケツが出る、という(昔の)FFの悪いクセをどうにかしてなくしたい、というキモチがけっこうビンビンに伝わってきた。

 

まず、ターンインがすごい素直。ダンパーはすでにヌケヌケだしバネだってそんなにカタくないのに、あんまりロールしないでスーッと(ピピッと、ではなく)ハナが入る。パワステつきでラクってこともあったにせよ、リトモ“イノシシ”130TCあたりと違って「えいやあ!」とか「どりゃあ!」系では全然なし。いと優美。その際リアサスはでしゃばらず、フーッという感じで曲がる動きを助けてくれる。「曲がる動きはもういいな」と思ったあたりでスロットルペダルを踏み込むと、今度はそのリアサスがスイッとキレイに沈む感じに動いて姿勢が安定(マルモさんによるとリアのコイルはすごい柔らかいそうだ)。

 いかにも細くて長いアシが上手〜く動く感じ。ゴルフ2あたりとも全然違う走り。筋トレで足腰鍛えたというよりは生まれつきダンスが上手、みたいな。ジーン・ケリーよりはフレッド・アステア、って感じか(ちょっとカルチャー系)。たしかに、20ウン年前にこれ乗ったらたまげるのもムリはない。そらマネするよ。でも、こんなにキレイに走るFFの日本車にワタシは一度も乗ったことがない。

 あとそう、オープン系ということで気になる(笑)ボディ剛性は別にヤなとこなし。だって実質は大型サンルーフ+後ろだけ幌だから。ロールバーはブッ太いのがあるし、いわゆるタルガトップとは違って屋根外してもドアの上んとこにはちゃんと柱が残ってるし。

 マルモさんにいわれてハッと思ったことに、このベータ・スパイダーは「3速の中速域を使って走るワインディングがめちゃめちゃキモチイイ」そうだ。2速でギャンギャンでも、また4速5速でバビューンでもなくて。たしかに。でまた、清水市周辺にはそうやって走れる絶好の道があるそうな。名前忘れたけど、山梨のほうまで続いてる道で。いいなあ。

 もっと楽しく走りたいって思っていきなりアシかたくしたりキャブでかくしたりタイヤ太くしたりする人が多いじゃないですか。でも、それってちょっと違うんじゃないかとワタシあたりは思うわけですよ。部品売ったり取っ替えたりする店の人は喜ぶだろうけど。マルモさんも、〈ベータ・スパイダーはこう走ると最高〉というシチュエーションをきっちり見つけたから「クルマは現状で十分満足」になっている。たんにカネがないからとかそういう理由でイジりを控えているわけでは別にない。実際、A112アバルトとか乗ってたときは絵に描いたようなギャンギャン系で楽しんだらしいし。

 さすが坊さんだけあって考えてる。日蓮宗だからえーと、ナムミョウホーレンゲキョーか。多額の御布施をはずんだり広大な田畑を寄付したりしなくても、そのフレーズを唱えるだけで救われる(違ってたらスイマセン)。一見弱気なだけみたいに見えて実はかなり攻撃的な思想でもある。それに、ベータ・スパイダーけっこう速かった。後ろからメガーヌで追っかけたら。89psのクセしやがって(笑)。



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